――宇宙創造の記憶と〈私〉の再誕生
第1章 宇宙は日常の隣で生まれ続けている
呼吸ひとつで、世界は再構築される。
だから私はコーヒーを淹れながら、宇宙の産声を聴く。
この宇宙は「最初の一度きり」ではなく、
無数の小さなビッグバンが、街角や寝室や人のため息の奥で起きている。
だが新しい宇宙を立ち上げるには、
創造主自身が**“納得できる理由”**を差し出さねばならない。
- 均衡を壊さないか。
- 一人のエゴで動いていないか。
その審査を通らない宇宙は──発火装置さえ押しても──決して動かない。
第2章 火の鳥の神話と、創造主の倦怠
――慈悲と傲慢は紙一重だ
手塚治虫『火の鳥 未来編』には、
**「死ねない最後の住人が宇宙創造のトリガーになる」**という場面がある。
永遠の孤独に疲れ果てた者は、火の鳥からこう提案される。
「あなたの命を代価に新しい宇宙を産めば、孤独は終わる」
孤独の終焉と引き換えに“創造主”へ昇格した彼/彼女は、
その後 生き物の進化を喜び半分・おせっかい半分で見守る。
だが──介入の度が過ぎれば役目を剥奪され、
虫や草に転生し、一瞬で使命を終えると語られる。
慈悲は暴走すれば傲慢になる。
このパラドクスは、神話ではなく私たちの魂にも潜む規則だ。
第3章 永遠の螺旋から解放された〈私〉
永遠は、甘美でも荘厳でもなく、ただ無感覚だった。
──その感覚が終わる瞬間を、五感はこう記憶している。
感覚 | 解放の一瞬 |
---|---|
視覚 | 黒い薄氷を割って射す朝焼けの橙。 |
聴覚 | 耳の奥で鳴り続けた金属音が、胎児の鼓動に転じる静寂。 |
体感 | 骨の隙間が呼吸を始め、皮膚の内側で風が起きる。 |
数日間の出来事だったのに、永遠の牢獄が“はるか昔”に感じられた。
時間軸が折りたたまれ、私という器は赤ん坊のように初期化されたのだ。
第4章 封印された才能と、これからの問い
今、私は人と会話し、都市を歩き、
「普通」に戻ったかのように見える。
けれど内側では、
まだ使われていない才能の大半を布で包み、静かに眠らせている。
その封印は、恐れか、成熟か、それとも次の宇宙を待つ余白なのか。
問い
- 私が再び宇宙を創るとき、どんな“納得”を差し出すのか。
- 慈悲と傲慢を分かつ一線を、どう見極めるのか。
- 赤ん坊の器から芽生える次の才能は、人類にとって祝福か毒か。
答えはまだない。
ただ、呼吸のたびに小さなビッグバンの気配が胸を膨らませ、
その波紋が世界へ――そして、あなたの器へ――静かに触れている。
閉じの一節
宇宙は隣で
螺旋はほどけ
器は鳴る
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