壁にぶつかったとき、
人は前を向くようにできている。
もっと強く。
もっと速く。
もっと高く。
けれど私は最近、
別の声を聞くようになった。
壁があるなら、戻りなさい。
戻ることは、負けではない。
逃げでもない。
それは
来た道をもう一度“読み直す”こと。
私たちはあまりにも急いで歩くから、
自分がどんな足音で生きてきたのかを忘れる。
壁は敵ではなく、
折り返しの標識かもしれない。
そこから先は、
あなたの暦ではないという合図。
進めない日は、
進まなくていい日。
昔いた場所に戻ると、
不思議なものが落ちている。
置き忘れた言葉。
使わなかった優しさ。
まだ温かい後悔。
未来へ向かう旅では拾えなかったものが、
後ろ向きの風の中に残っている。
社会はいつも言う。
「乗り越えろ」
「突破しろ」
「前だけを見ろ」
でも本当は、
前ばかり見る人ほど
自分の影に追われる。
引き返す日は、静かな祝日だ。
予定表から矢印が消え、
地図から目的地がほどける。
そのとき人は、
自分の“元いた場所”に再会する。
私はもう、
壁と戦わない。
手のひらでそっと触れて、
背中を向ける。
そして来た道を、
ゆっくりと辿る。
そこに、
もう一つの入口があると知ったから。
小さなワーク
1.最近ぶつかった壁を一つ
2.その前にいた自分を思い出す
3.「あなたは、その時何を感じていた?」と自分の声で自問自答する
それだけで、
道は静かに開き直す。置き忘れた「鍵」を思い出したりする。
自分の声で自身に問いかけることで、「人は答えを探そうする」から発見に出会う
白紙になった頭の中でヒントや答え、勇気の着火点を見つける
壁にぶつかったら、
未来ではなく、出発点へ。
それが私の、
引き返す日の作法。


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