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【毒の声】 変わる、の呪い

※この文章は、ある自己啓発セミナーへのお誘いをきっかけに揺れた内面を記録したものです。
誰かを批判したり、何かを否定したいのではなく、
「変わらなきゃ」と思い続けてきた私の、そのときの“正直な温度”を残しておきたくて書きました。

言葉にならなかった思いが、朧のままでも“在った”と感じられたらと思います。

自己啓発セミナーに誘われた。

1年近く誘われ続けたけれど、結局ずっと断っていた。
それでも私の中には、どこかでずっと迷いがあった。

変わらなきゃ。

その気持ちは、15年前の“あの時”から続いている。
人生を変えた――と当時は信じていた、あの高揚感。
周囲の積極性と、自分の消極さ。
それはまるで「私は劣っている」と突きつけられるようで。

あの頃も、今回も。
結局、私の“変わらなきゃ”は、
いつも自分の“不足”を埋めるための行動だった気がする。

セミナーに飛び込んだのは、夢があったから。
でもいつの間にか、夢は誰かの正しさに置き換えられていった。

洗脳のようなものだ。
ひとつの価値観が、別の価値観に上書きされていく。

今回のお誘いも、まさにそんな気配を孕んでいた。

日々の不協和。
くすぶりつづける違和感。
それらを一気に“正解”で上書きしてくれるなら、それでいいと思った。

誘われるくらいなら、いっそ受けた方が楽かもしれない。
そう思って足を踏み入れた先で――

私は、また静かに、メンタルを落としていた。

初日。
周囲との温度差に、胸がざわつく。
隣の人に挨拶もできない自分に、15年前の自分を思い出した。

まるで、小学校に入学したばかりの朝。
知らない人ばかりの教室に、心細く立ち尽くしていた、あの日。

変わるためには、まず“最初の挨拶”が必要だと言うけれど、
私にはその挨拶が、ずっと苦手だった。

気がつけば、眠気と、うっすらとした気づきだけを抱えて
夜中、静かに帰宅していた。

「変わる」ということが、
あんなにも騒がしく語られる場所に身を置きながら、
私はむしろ、
「このままの自分で、ただ静かに在る」ことの方に、少しだけ光を見ていたのかもしれない。

言葉にならなかったものを、
今日も少しだけ、ここに置いていく。

――朧宙(おぼろそら)

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